…ジュリア。


気性の荒い…やんちゃな、猫。


猫じゃなくて、人の名前だったんだ。


―――『ジュリアの世話もこなしましたから』


初めて会った日、柳は確かにそう言った。



…つまり、昔はジュリアさんの世話係だったってこと。


あたしの世話係になったのは。





―――あたしが、ジュリアさんに似てるから?





「………っ!」


あたしは唇を噛みしめると、踵を返した。


自分の部屋へは向かわず、違う部屋の前で立ち止まる。


「―――パパッ!」


勢いよく扉を開けると、仕事をしていたのか、眼鏡をかけたパパが目を丸くした。


「…咲良?どうした、遊園地じゃ…」


「帰って来たのよ!」


不思議そうに首を傾げるパパに向かって、あたしはずんずん進む。


あたしが口にしようとしていることは、訊いたらいけないことかもしれない。


心のどこかで、訊いたらいけないって分かってる。