帰り道、事故を起こすんじゃないかってヒヤヒヤしてたけど、心配いらなかった。
相変わらず下手くそな運転だけど、無事に屋敷まで辿り着いた。
「…お嬢様」
「一人で降りられるわ」
差し出された手を拒むと、柳は傷ついたように微笑む。
その表情に、イライラした。
…どうせ、誰かさんとあたしを重ねているんでしょう?
「今日はもういいわ、柳。ありがとう」
「…いえ、」
「疲れてるでしょう?今日はお互い、ゆっくり休むべきだわ」
柳の顔を見ずにそう言うと、「…はい」と弱々しい返事が聞こえた。
あたしは唇をきゅっと結ぶと、足早に自分の部屋を目指した。
―――バカ。バカ柳。
そんなあからさまに、傷ついた顔して、元気なくさなくても。
原因なんて、嫌でも分かるじゃない。
―――『樹里亜っ!』
柳の悲痛な叫び声が、耳に残って離れない。