午前0時の少し前、あたしはセットしていたアラームの音で目を覚ます。


いつものようにガウンを羽織り、窓から身体を滑らせた。



慣れた動作で屋敷の外へ着地すると、あたしは屋敷を振り返る。


いつもなら、絶対に振り返ったりはしなかった。


自分の家ですら、あたしの居場所はない気がしてたから。



でも…今は違う。


「………よし」


短く気合いを入れると、あたしは屋敷に背を向けて走り出した。


森の中を走る間、胸のドキドキは消えなかった。


…決めたの。

あたしは、今日―――――…





目的地に辿り着くと、あたしは乱れた呼吸を整えた。


その扉の前に立ち、大きく深呼吸をする。


「…大丈夫」


自分に言い聞かせるようにそう言っても、身体の震えは止まらない。


手のひらをぎゅっと固く握ると、あたしは扉をゆっくりと開き、中に入った。



――――泉さんの、お店へ。