「…無理だな」
聞こえた言葉に、問題集を意味もなくじっと見ていたあたしは、視線を僅かにずらした。
困ったように眉を寄せる柳が、あたしに微笑む。
「お前の心を完全に救い出すなんて、そんなヒーローにはなれない」
「でしょうね」
「え、そこ否定しねぇの?」
だって無理よ。
そう言うのを堪え、あたしは視線を問題集の上に戻した。
「…そんなことできるの、魔法使いしかいないわ」
このどうしようもない気持ちを、何で埋めればいいのかなんて、あたしですら分からない。
それが柳にできたら、それこそ魔法使いだよ。
「…だから、言っただろ」
「え?」
「俺が、魔法をかけてやるって」
信じられない思いで、あたしは柳を振り返った。
「…今さっき、無理だって言ったじゃない」
「や、完全には無理だけど…」
柳は一旦言葉を区切ると、ニヤリと笑みを浮かべた。

