「…じゃあ、何?」
あたしの小さな言葉が届いたのか、柳は「ん?」という顔をした。
あたしはやっと柳から視線を外すと、手元の問題集を見つめた。
そこに並んだ数字なんて、頭に入ってこないけど。
「だからって、柳があたしを助けてでもくれるわけ?」
悲しいなんて、思っちゃいけない。
あたしはこの王ノ宮家に生まれて、普通とは少し違う運命を授かった。
大きな屋敷に、たくさんの執事やメイド、豪華な食事。
自分と同じように着飾った人たちと、愛想笑いを繰り返し、興味のない話題をする。
…本当の笑顔なんか、どこにもなかった。
けどそれを恨むことなんて、できないの。
―――あたしはあたしに生まれて、ここにいる。
その紛れもない真実を否定したら、あたしはあたしじゃなくなるから。
だから。
悲しいとか、助けてとか。苦しいとか、辛いとか。
心がどれだけ叫んでも、それはいらない感情なんだ。

