屋敷まで、どう帰ったのかは覚えていない。
ただ、悲しくて、辛かった。
逃げ出した時点で、あたしはもう泉さんを想う資格なんてないのに。
「……っ、はぁっ…」
全速力で森を駆け抜けたせいで、息が上がる。
普段運動しないから、体力がもう限界だった。
屋敷の門の前で呼吸を整え、重い足取りで敷地内に足を踏み入れた。
…と。
「………は?」
視界に映った光景に、思わず声を上げてしまった。
何度も瞬きを繰り返しても、その光景は消えない。
「…夢じゃ、ない?」
屋敷の扉の前で、柳が………寝ていた。
「何してんのよ…」
急に脱力感に襲われ、あたしは呆れながらも柳に近寄った。
段差に座り、柱を背もたれにして、柳はスヤスヤと吐息を立てていた。
その寝顔が、何とも整っているからムカつく。
「柳っ」
名前を呼んでも、柳は反応を示さない。

