あたしは泉さんに近付くと、鞄から袋を取り出した。
「…これ!この前舞踏会で、おいしいコーヒーが出たんですけど、その豆を貰ってきました」
泉さんはあたしから袋を受け取り、中を覗いた。
「いい香りだ…」
フッと笑う泉さんの表情を見ると、胸が苦しくなる。
けど、それを隠すようにあたしも笑った。
「良かったら、ぜひ使ってください」
「本当にありがとう、咲良さん」
もう一度泉さんに向かって微笑むと、あたしは背を向ける。
「じゃああたし、帰りますね!」
「え?一杯飲んでいかないの?」
…ダメだ。
泉さんに引き留められるだけで、涙が出そう。
「咲良ちゃん、私のことは気にしなくていいのよ?」
花蓮さんに声を掛けられ、あたしは早くこの場から去りたいという思いが増した。
「…大丈夫です!これから用事あるので!」
最後に振り返って、精一杯の笑顔を見せると、あたしは外へ飛び出した。

