空気を吸い込んで、あたしは部屋から飛び出した。


するすると木々の間を抜け、屋敷の外へ着地する。


「………げ」


ふと視界の隅に映った姿を見て、あたしは慌てて身を隠す。


…柳だった。


どこかに出かけていて、今帰って来たらしい。


「…全く、どこ行ってたのよ」


あたしは、柳に気づかれないように森に入った。



いつも夜見ていた森と、昼間の森は、どこか空気が違っていた。


夜の澄んだ空間も好きだけど、昼間ののどかな雰囲気も好きかもしれない。


あたしは足早に森の奥へと進むと、目的地へと急いだ。



辿り着いたのは、あたしの大好きな場所。


毎日通っていたのに、最近はいろんなことがありすぎて、中々来れなかった。


小さな鈴の音に招かれ、お店に入るとすぐ、大好きな人の姿を探した。


「泉さ―――…」


「咲良さん?」


あたしが口をつぐんだのは、泉さんがいたからじゃない。