だが違う。
その考えは、絶対に間違っている。
あいつはさっき、ヤゴコロオモイカネとか言っていたのだから。
あたしの本能の仕業ならば、そんな聞いたことも無い固有名詞など、出せる筈がないのだから。


そうだ、ついでにこれも聞いてみよう。


「あの、話は変わりますけど、ヤゴコロオモイカネってなんだか解ります?」

「ああ、それは古事記に出てくる全知全能っていうか、知恵の神様ですよ」

「かっかっ……、神様ですか!」


正直驚いた。
古事記、神様ときたか。


なぜそんな名前がこの平成の世になって、明らかに霊であると解る、あいつの口から出てくるのだろう。


「古事記ってことは漢字ですよね。どんな字書くんですか?」

「八つの心は思いを兼ねる。この四つの漢字を並べてヤゴコロオモイカネ。正式には兼ねるの横に神が付いて、ヤゴコロオモイカネノカミっていうんですよ。一般的にはオモイカネって呼ばれてます」