どうか、聞こえていてほしい。
どうか、症状の一部であってほしい。


「ええ、聞こえましたよ。息を吸いながら声を出してるあの『ひいっ』っていう、喘ぎ声なんだか呻き声なんだかよく解んないやつ」


力が抜ける。
とんだ脱力話を聞かされてしまった。


「そうじゃなくて発作を起こす五分ぐらい前に、なんかすごく気味の悪い声で『潰す……。成功など……、させぬ……』とか、『息の根を……、止める……』とか」

「いや、そんなのは無かったですねえ。てかそれ、なんですか?」

「あたし聞こえるんですよ、そういうの……。さっきのも息の根を止めるって言われました」

「うーん……」


何か深く考え込んでいる。
眉間に刻まれたシワが、全く答えが出てこないことを示していた。

「それって、危機回避の一種じゃないですかね……。生存本能が発作の予兆を感じ取って、オドロオドロしく知らせることによって、より確実に、より迅速に薬を用意させようっていう感じの」


なるほど、そういう考え方も有りか……。
あたしみたいなビビりには有効な手段かもしれない。
確かに、あたしのことを誰よりも解るだろうあたしの本能だったなら、そう考え、実行することも多分に有り得る。