これはあたしの責任なのだから、責任者が傍観している訳にもいかない。急いで掃除に加わった。
「あ、いいですよ、無理しなくても。僕一人でやっときますから、帰って休んでてください」
「そうはいかないですよ、もう収まったんですから」
「発作は収まっても、気分はなかなか落ち着かないでしょ? 病み上がりは無理しないほうがいいですよ」
確かにそうだ。
今回の発作はいつにも増して、精神的なダメージがかなり大きい。
「ごめんなさい……、お言葉に甘えます。これ、マニキュア落しです。そこの赤いやつ、これで落としてください」
マニキュア落しを渡して帰ろうとしたとき、確認してみたほうがよいと思い立ち、聞いてみることにした。
「あの、大竹さんも喘息だったんですよね? 発作が起こるとき、変な声聞きませんでしたか?」
もしこれで聞いたという返事が来たならば、その時点で【幽霊の正体見たり枯れ尾花】だったことを確信できるのだ。
だって、発作前の幻聴も症例の一部なのだということになるのだから。

