「辛かったでしょうね。何分くらい吸えなかったんですか?」
どうやら大竹さんは勘違いしているようだ。
くどいようだが、喘息とは【吸えなくなる】のではなく【吐けなくなる】のである。
そしてそれ以上に、今だに向けられている猜疑の目が、とにかく気に入らない。
その結果、
「ずっと吸えましたよ。それこそ吸い過ぎて肺がパンパンになっちゃうぐらい。吐くことは全くできませんでしたけど」
と、喧嘩腰の言葉を投げ付けることになってしまった。
《あたしみたいな女の子に喧嘩売られたって、たいした怖くもないんだろうし、たぶんこのままバトるんだろうなぁ》
そんな考えとは裏腹に、大竹さんの顔付きは思いやりに溢れた優しい笑顔へと変わった。
「ほんとに喘息だったんですね。たまにいるんですよ、喘息を職務怠慢の言い訳に使う大馬鹿野郎が……。僕も昔喘息持ってたから、そういう馬鹿を許せなくて……」
テキパキと手を動かしながら、疑っていた事情を説明してくれた。
確かにかかってもいない喘息を理由に、己の責任を放棄しようとすることなど、あたしだって許すことはできない。
「ごめんなさい、加わります」

