ユビサキからあなたへ

張りつめていた糸が切れるかのように、完全に心が離れた気がした。

どんなに探したって、俺たちが過ごしたあの日々は返ってこない。

もう抵抗する意味も理由もなくなった。









「大事にしろよ。」


池上のことを言ったつもりだ。


「うん。わかってる。」


もしかしたら、恵はバッグのことだと勘違いしたかもしれない。





大丈夫だ。
心配いらない。

この先はひとりで歩ける。








恵だって。








俺だって。