因みに“08”とは少女の仮の名前らしい。
 ドール達の名前はご主人様が決める規則だとか。
 あんまり可愛い名前つけてやれる自信ないけど、いいのだろうか。
 一応聞いてみたりしてみしようか。


「あ、あのさ」
「はい」
「こんな名前が良いとか、ある?」
「……ご主人様が決めることに私は口だし出来ませんので」
「ああ、成る程……」


 失敗。
 やっぱり名前は俺が決めるしかないみたいだ。
 家の中をぐるっと見回して名前のヒントを探す。
 それよりどうみても日本人ばなれした顔だから、カタカナの名前の方が良いのか?
 あーもうどうすればいいんだっ
 唸りながら思案する俺を、少女は退屈そうな眼で見つめる。
 何だかさっきと比べて人間らしい表情をしている気がする。
 まぁドールにも性格があるとかどうとか言ってたからな……。
 ! そうだ、名前……


「アリア……とかは?」
「アリア?」
「……気に入らない?」
「いえ……ご主人様の決めたことは絶対ですので……」
「えーとじゃあ君の名前は今日からアリアで」


 “アリア”
 悪い名前じゃないと思う。
 あの“女性(ヒト)”の名前をもじっただけだけど。
 少女……アリアも気に入ったみたいだし。
 さっきから何度も小さく繰り返し呟いている。
 名前も決まったことだし、スタートは……順調だと思いたい……。
 ……結局、洋館でドールセレクションの詳しいことは聞かなかったな。
 ただ単にドールを選ぶ為だけの何か……だったのか?








「どうして08が選ばれたの?!」
「あの子なんかより絶対私の方が美しいドールなんだから!」
「08なんて前のご主人様の所でだって……」
「お黙り」


 一瞬にしてその場が静まる。
 仮面少女……アリッサは仮面を外して、その可愛らしい顔をさらした。
 真っ赤な唇は楽しげに歪められ、長い金髪は歩く度にふわふわと揺れる。


「08は可哀相なドールなのよ。 ……貴女達と違ってドールセレクションの運命から逃れられない」


 そう、姫への呪いは永遠なのだから……。


 第二章へ続く。