何より他の少女達と違うところは、俺の方を見ていない。
 確かに真っ直ぐこちらに顔を向けてはいるのだが、視線はどこをみているのか分からない。
 でも凄く、そう、三日前に手紙を貰った時の様に胸が酷くざわついた。
 気付いたら俺は、


「……あの子を、」


 ドールに下さい。









「では、お気をつけてお帰り下さいませ。 ドールの服や必要な物などは響様のご自宅へ送らせて頂きますので……」
「は、はい」
「それでは08、元気に暮らすのですよ」
「了解……」


 仮面少女が俺達にお辞儀をすると、洋館の玄関扉は閉まった。
 俺達、か。
 ちらっ、と隣にいる少女へ眼を向ける。
 歳はそう変わらないだろう、何となく。
 つーか、何で俺はこの子を選んだんだ?
 誰も選ぶ気は無かったのに、眼に止まった所為で俺はこの子のご主人様になってしまった。
 しかも家に連れて帰らなくてはいけないらしい。
 再びちらっ、と少女を見る。
 檻の中で見た時と変わらない、長い銀髪、白い肌、蒼い瞳。
 本当のお姫様の様に綺麗。
 っと、急にこっち見てきた。


「……どうかした?」
「いえ……何でも……」
「あっそ……」


 俺、この子と仲良くやっていけるのかな……。
 とりあえず、帰ろう。
 ……こんなドレス姿で容姿端麗な子と一緒に電車なんか乗ったら、絶対注目されるな。 はぁ









「やっと……着いた」


 電車で二時間揺られて(勿論注目の的だった)、駅から家まで三十分歩いて(近所の人には変な目で見られた)やっと俺は我が家に帰り着いた。
 ドールを連れて。
 俺が鍵を開けて家の中に入ろうとすると、少女も大人しくついてくる。
 何かひよこみたいで可愛いかもしれない。
 まぁそんなことはさておき、家の中に入る。
 真っ先にリビングへと向かい、向かい合うような形で少女をソファに座らせた。
 洋館を出る前、仮面少女に“家に戻られましたら、08とゆっくりお話し下さい”と言われたからだ。