向こう岸のきみ【掌編】


陽が昇り、沈み、
風が暖かくなり、冷たくなり、



その巡りがえんえんと続いた。





これまでと何も変わらないようで、彼にとってはなにもかもが違った。




「あなたは本当に変わらないのね。」



娘は、彼を見て笑う。
彼もやがて、忘れていた笑みを思い出していた。



「あんたはころころ変わるんだな。」



目まぐるしく変わる、けれどいつも美しい彼女を、彼はいつしか

何より愛しく感じるようになっていた。





お互い、間に横たわる川を越えて行くことはできなかったけれど、言葉を交わし、揺れる川面を眺めているだけで、

満たされた。