つー、と口の端から血が流れたのを見て、俺はぺっ、と奴の足元に唾を吐きだす。



「此処に犬っころ差し出してくれてもいいんだけどなぁ。……下の不始末は上が尻拭かねぇとな」



無表情のまま言葉を口にすると、番犬はゆっくりと口から零れた血を指で拭き、血が出たのだと確認をする。

それからおもむろに俺に視線をあげるが、……その視線は酷く冷たく、凶暴で、そして楽しそうだった。



ああ、それでこそ番犬、ケルベロスだ。



番犬は舌で血を舐めると不敵に笑った。



「あははァ……、いいよ。獅子とタイマン張れるなんて滅多ない機会だし? ……二度と面拝めねぇくらいにしてヤルァ!!」



動く影と影。

飛んでくる拳、それを間一髪で避ける。



頭の片隅にはチラつく歩と輩の泣き顔。

腹が立ってた、俺を信じれなかった歩にも、脅しをかけてきたケルベロスの輩にも、そしてそんなコスモスを守りきれなった俺自身にも。



だから、これはケルベロスと、俺自身のオトシマエだ。



鋭い音を立てて飛んできた拳を拳で受け止めると、その拳を捻り上げる。

あらぬ方向へ曲がろうとする腕。