その目を見据え、腹からドスの利いた声を出す。



「てめぇは犬っころの手綱も引けねえのか」

「…………」



番犬は考えるようにして眉を寄せると、手を叩く。



「あ、あれね。ごめんね、うちの馬鹿たちが迷惑かけちゃったみたいで?」

「んな言葉で片付けられたら、てめぇ此処に呼んでねぇよ」



鼻で嘲笑うと番犬が数回頷く、まるで納得したように(分かってて来てるくせに、な)。

心臓はそこに溜まる怒気が噴射されるのを今か今かと待っているように、激しく波を打つ。



俺は此処にオトシマエを付けに来た。



どろり、と心臓から吐きだされた怒気を感じ、俺は一瞬だけ笑う。

そしてすぐゆらり、と後ろに下がり闇に隠れる。

瞬時に変わる番犬の顔。

ゆっくりと闇の中を移動し、番犬の背中を捉える。

そのまま足音を立てず、だが引きずるようにして背後まで歩く。

番犬は此処まで来て俺の存在が後ろにあるのだと気付いたのだろう、はっとして後ろを振り向く。


はっ、その瞬間を待ってた。



――――ガッ、ゴスッ!!



右頬にストレートを喰らわすと、番犬は頼りなく後ろに数歩後ずさる。