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規則的な機械音を耳に、獅堂秋羽はゆっくりと瞳を開けた。

広がる景色は真っ白で、薄ぼやけたそれを暫く眺めて小さく呼吸を繰り返した。

口につけられたマスク内で震える息が、生命を物語る。

真っ白な天井からゆっくりと視線を横に逸らせば、そこにあったのは人間の熱。




椅子に腰掛け雑誌を読み込む、西条歩のものだ。



その姿を目に焼き付けた瞬間、血が巡り、身体の真ん中にある臓物が唸りをあげる。





布団の中にある冷えた手が震えながらも、その熱を求め動き出す。

酷く呼吸がしづらい。

喉元に何か詰まったような感覚に秋羽は眉を寄せた。



「……ん?」



微かな動きを横目に捉え、歩は視線をあげた。



そして、絶句。



目の前には1週間もの間、意識を戻さなかった人間が瞳を開けて此方を見ていたのだ。

震える手から雑誌が落ち、派手な音を立てた。



「あ、あき、秋! 目、覚めたのか!?」



立ち上がり駆け寄る姿は、彼がどれだけこの時を待ち望んだのか物語る。