獅堂家、資産家であり、日本最大規模の医療機器を営む会社。

機器だけではなく医療に関することならば、幅広く手をかける。

お陰で世界にまでその名を轟かしている。

それが獅堂家、そしてそれを総べるのが俺の親父、俺はそいつの息子。

気持ち悪くて反吐が出る。



佐倉は俺の事をどれだけ知ってるのか、なんて関係ない。

俺が獅堂の、あの糞じじいの息子だと知ってりゃあいい。



「俺は糞じじいを殺したいほど嫌いだ」



今にも唾を吐き出しそうな勢いで言うと、佐倉は目を丸くした。



「お陰で俺は狂ったばばあに殺されかけた」

「母親に?」



黙ることで肯定を示し、口を開く。



「小学3年に上がった時だ」



今でも鮮明に浮かんでくるあの人の顔。

綺麗な顔と、唇にひかれた鮮やかな紅。