そんな俺をよそに女はベッドに腰を掛け、俺を見下ろす。



「佐倉弥生(さくらやよい)、アンタの学校の副担任。よろしくね」



佐倉と名乗った女は小さく微笑んだ。


それからさっきまであった事情の説明をベラベラと言うもんだから、俺は黙ってそれを聞いていた。

助けるためだとは言え、初対面の女にしかもセンコーに唇を押し付けられたと思うと、またしても不快感(一夜限りの女なんて腐るほどいるけど)。


あと、今年に入って赴任してきた学校が黒王学園で、学校にきていない俺に気づき迎えに来たのだという。

どこからどこまでが本当なのか怪しいところ。



「一応生徒名簿確認してアンタンところ来たんだけどさ、病気、あったんだね」



あれを病気というのなら……、ああ病気のようなものか。

俺は頭が覚醒してきたのを確認し上半身を起こし、嘲笑うように女を見る。



「精神的障害、トラウマ、パニック症候群。好きな呼び方で呼べよ」

「医者の見解?」

「ああ」



佐倉は顔色変えず、俺の話に食いつく様子もなく、ただ俺を見る。

生徒名簿を見たと言う事は、俺の実家についても多少知識はあるのだろう。