Cherryblossoms...10






月日は流れたが、弥生はあのまま相変わらず。

あんなに激しく泣いた次の日も、ケロッとした態度で俺に接してきた。

迷惑かけたね、とか、飲みすぎ注意だな、とか、本当に何事も無かったかの様に、だ。

何事もなかったようにされるのは虚しいが、弥生らしさとその優しさに、俺は追求しないことを決めた。





そして、時は文化祭当日。


散々こき使わされて、挙げ句の果てには“執事喫茶”だとかなんとかで、燕尾服をきせられる羽目になった。



「……金髪の執事か、これはこれでいいんじゃないかな?」



空き教室でそれぞれが準備をしている中、原沢が感慨深く言う。



「あ?」

「いや、秋羽って金髪で身長も肩幅もあるから一見厳ついイメージなんだけど……。よくよく見たら、目鼻立ちくっきりだし、整った顔してるなぁって」



うんうん、と頷いて下から上まで見られるのはいい気がしない。

何か注文しそうな瞳に嫌な予感しかねえ。

この服を着ることを了承したのは、着てるだけで喫茶店の仕事はしないでいい、と言われたからだ。

それ以上の事を求めるならば俺は今すぐこの服を破り捨てて捨ててやる。

そんな意を込めて原沢を睨むようにして見る。



「……分かってるよ、看板になってくれればいいから。なんなら看板持って歩き回ってくれるだけでもいいよ」

「お、それいいんじゃね? 秋羽ならいい宣伝になりそう」



話を聞いていたのかクラスの男子(名前は忘れた)が便乗する。

その輪は次々に広がり、女子や男子が口々に賛成の意を唱える。