散らないサクラ



いつからかその思いは、欲望は高まり、弥生からの愛情を求めるようになった。

ベッドの上で体を重ね、絡まる吐息、重なる情、そして熱を持つ瞳。



『……秋羽』



熱を孕んだ名前。

あの時のように見つめ、名を呼んで欲しい。

無駄だと思う、だけどセックス以外でも愛を感じさせて欲しい。



俺は折れるんじゃないかと思うくらいに奥歯を噛み締めた。

ギュリ、と鈍い歯が削れる音がした。






* * * 



「秋羽? ……秋羽!」



目の前に肌色の物体がヒラヒラと揺れる。

教室の机の上に脚をさらけ出し、ぼうっと教卓を眺めていた俺はその物体に視点を合わせる。

肌色の物体は原沢の右手だった。

手から視線をあげて行くと心配そうに眉を寄せる原沢がいた。



「あ? なに」

「なに、じゃなくて……。大丈夫? 今日一日上の空だけど」



不機嫌なトーンにも関わらず原沢は労りの言葉を寄越した。

それに少し罪悪感を覚えたが視線を落とし首を振る。



「なンもねえ」

「そっか。……佐倉先生いないし、それが原因かと思ったけど」

「……分かってンなら聞くな」

「はは、ごめん」



乾いた笑いをし、謝ると、原沢は俺の隣の椅子に腰掛けた。



今日は金曜日。

弥生の旦那の命日の日、弥生のいない学校。