純粋な思いだった。

俺に純粋なんて言葉が似合わねえのは分かるが、そうただ弥生の愛した男を見てみたかった。

実際に見れるわけじゃねえけど、それでも骨のある場所で宣戦布告ぐらいしてやろうかと思っていた。

そして“幸せにするから安心しろ”なんて偉そうな言葉ぐらい添えて手を合わせようと考えた。

だが、一刀両断。



「……悪いけど、アンタに立ち寄ってもらいたくない」



それは冷たく、重たい言葉だった。



――――拒絶。



それ以外の何物でもない。

そしてその言葉がまるで縄みてぇに俺の体を縛って動けなくさせる。

硬直した体を弥生が通り抜け、ソファに腰を下ろす音を聞く。

それからリョウと会話を始めたがそれが俺の耳に届くことはなかった。





はっ、無様過ぎる。

たかが一回の拒絶でガタガタしやがって。


……いや、たかが一回の拒絶じゃない。


でかい、この拒絶はでかい。

あいつの核心部分に触れようと手を伸ばし、あいつはそれを振り払った。

一緒に住んでいても、体を交じえていても、時間をともに過ごしても。

弥生の核心には触れられねえ。

触れさせてもくれねえ。



弥生を腕に抱き、体を合わせた時に分かってたはずだ。

あいつからの愛情をもらうことは出来ないという事。

だから俺は俺から与え続ければいいと、好きな女を腕に入れ、抱きしめることができるならそれで十分だと。