「あ」



そんな俺の気持ちとは裏腹に弥生の声が弾む。



「あたし来週の金曜日学校休むから」

「は?」



突然告げられた言葉に動作が止まる。

なんて事なく投げつけられた言葉に疑問が浮かぶ。



「……なんかあンのか」



親父が倒れたから俺には分からねえ雑務とかがあるのかも知れない。

頭の中ではいくつかの候補を出しておきながらも、弥生の口から聞きたいと思うあたり、俺も成長したんだと思う。

短期間に自分で自分を褒めていると、弥生がキッチンの横にある写真立てに目をやった。



……つまり、最愛の人と自分の写真だ。



その事実にググ、と心臓が収縮する。



「墓参りに行くの」



その短い言葉だけで、全てを悟る。

リョウを横目で見れば煙草をふかし、同じように写真立てに目を向けていた。

弥生の想い人の命日だという事は、言葉にしなくても嫌でも分かった。

写真立てを手に持ち、愛しそうに眺める(そう見える)弥生の顔が俺の心臓を、気持ちを焦らせる。


好きだの、惚れたの、偉そうな事言って。


結局なにもできずにいる俺自身に一番腹が立つし、弥生の内側に入れねえのがもどかしい。

灰皿に煙草を潰し、立ち上がる。



「俺も行きてぇ」

「来ないで」



間髪入れずに返答が来る。