Cherryblossoms...09



弥生の実家から家に着くまで、会話はなかった。

ただそこに流れる空気が冷たかったこと、そして俺はその冷たい空気を暖かくすることする出来なかったこと。

それだけが無情に漠然とあって、俺は自分自身の不甲斐なさに静かに笑った。




* * *


あれから数日。

学校では相変わらずの文化祭の雑用。

それにも若干嫌がりながらも慣れてきたことに吐き気がする。

絆されてんじゃねえって思う(だけど悪くないとも思う)。

バイクがあるからと色んな所に走らされ、今日も土曜日だと言うのにビラ配りだと。

イライラしながらビラを配り終え、悪態を付きながら家に帰る。



「お、秋おかえり」



リョウがソファに座り手をヒラリと振って迎えた。

それに片手を上げて答える。



「雑用だって?」

「っせ」



ニヤニヤと意地悪笑みを浮かべながら、煙草に火をつけるリョウを横目にソファに沈む。

夏より冷たくなったソファの温度は、簡単に俺を飲み込む。

ここに住んで意外と時間が経ったのか、なんて一人考えた。


暫くお互いに煙草を吸いながら他愛ない話をしていると、弥生の部屋が開く。

ラフな私服に着替えている弥生は俺を見つけると意地悪くニッっと笑ってみせた。


……糞が、こいつもリョウと同じだ。



「秋、あんたが使いっぱしりだってぇ? うちの生徒も偉くなったもんだ」



ガハハ、と下品な笑いを飛ばし、それにキレかける俺をリョウが止める。

絶対ホントにいつか、ぜったい、ヤル(色んな意味を込めてな)。

猫が毛を逆立てるみたいだな、なんて言う弥生の言葉を、俺はぐっと抑えて唸る。