散らないサクラ



その意味を俺は知らないが、優しさを感じた。



「そっか」



からっと笑って両手を上げて見せた疾風。



「獅堂ってそんなに素直に感情ぶつける人だったんだね。なんかイメージと違った」

「名前でいい」

「あー、うん。じゃあ秋羽?」

「ああ」



了解、と笑った疾風は暫く宙を眺めて、眉を寄せた。

何か思案しているように見えたがそこには触れず、暫く二人で茶を飲んで過ごした。

暫くの沈黙後、またもやそれを破ったのは疾風の声だった。



「俺と姉さん異母兄弟なの聞いた?」

「ああ」

「そっか、じゃあ話早いかな」



俺に熱を奪われて温くなった茶は、濁りを底に残りわずかになっている。



「俺姉さんの事すっげぇ好きなの。シスコンとか言われても別にいんだけど、それぐらい好き。敬愛もしてる」

「…………だろうな」

「俺がこの家に正式に迎え入れられた時、納得してない人大勢いてさ。だけど、何も言われず、チクチク刺さる視線だけが痛かった日々が続いてね。そんな中でも、俺に構ってくれたのは姉さんだけだったんだよね」



そう遠くない過去に聞いた話だ。

弥生の母親が死んですぐ、再婚した、と。



「姉さんだけだった」



『ああそう言えば初めましてか。あたしは弥生、あんたの姉だよ』

『…………』

『なんだァ? お口がついてないのかァ? ほら、な・ま・え』

『…………疾風』

『そっか、疾風。これからよろしくね』



その事を思い出しているのだろう。

疾風は遠い目をして天井を仰ぐ。