散らないサクラ



俺は拳を机の下で握る。



「……俺は弥生の学校の生徒で、弥生は俺のセンコーだ」

「ん? んぅ」



煎餅を食い終わり、茶を飲み干した疾風の瞳を捉える。



「だけど俺は、弥生が好きだ」



あいつを守りたいと思う、あいつが俺を守ってくれるより強く。

心の奥底で誰を思っていようが、俺を眼中にいれまいが、……関係ない。



俺があいつに惚れていると言う事実だけは変わりない。

あいつのように俺は強くなると決めた。



「心底、あいつに惚れてんだ」

「……あんた……」



自然と笑が溢れるのを、俺はもう止めなかった。

素直に誰かを好きだといえる感情、惜しげもなく愛しいと思う感情を与えたい。

滑稽でも、盲目だと言われてもいい。

むしろ上等だ。

俺は、もう逃げないことを誓った。



疾風は一度目を丸くすると、その後獲物を捉える猫のように目を細めた。



「……それを俺に言って、何がしたいの?」



目が、声色が、弥生の事を愛していると物語っていた。

ああ、こいつもリョウと同じだ。

恋愛とは違う意味で、弥生を愛してんだ。

頬が緩む。



「あいつは色んな人間に愛されてんな」



独り言のようにぽつりと呟き、未だに軽い殺気を漂わせる疾風の瞳を見つめ返す。