散らないサクラ



「……いやさ、本当にこんな時に連れてくる人間だから新しい男かと思うよねそりゃ」

「こんな時?」

「あれ、聞いてないの?」



疾風はキョトン、とした顔で俺の顔を見る。

弥生が電話に出て、それから此処に来たのは分かるが、理由は聞かなかった。

あの時の弥生の瞳の色は、少し苦しそうで俺はこいつを独りにしてはいけねえ気がして、此処までついてきたんだ。

弥生が何のために此処にいのか、そんなのはあの時の俺にとっちゃ別にたいした事じゃねえ。

俺はかぶりを振った。



「そっか。親父が倒れたんだよ」

「……親父?」

「そ、俺と姉さんの父親。ま、今ンとこ命に別状はないらしいけど一応、ね」



他人事の様にさらっと事実を述べる疾風は、近くにあった煎餅をバリッと齧った。

それを俺も他人事の様に聞き、さらっと聞き流しながら弥生のあの時の顔を思い浮かべていた。

親父が倒れたから、あんな目をしていたのか?

俺にはそれ以外にも何かあるんじゃねぇかと踏んでいた。

何かを押し殺した目。

……何が弥生を、あんな風に。



やっぱり俺は弥生の事を何にも知らねぇんだ、そう実感する。



でも俺はまたあいつの支えにもなれずに、こんなところで足踏みするつもりか。

なんの為に、俺はここにいる。

なんの為に、腹を決めた。



……なんの為に、俺はコスモスを解散させた。



募る思いは俺を駆り立てる。