散らないサクラ



ああ、この瞳。

俺は知っている。



「改めて、俺は疾風(はやて)、姉さんの弟だ」



こいつ、弥生に似てる目をしている。


笑顔で、すっと手を伸ばされる。

その伸ばされた手に悪意を感じない。

俺はその手を握る。



「獅堂秋羽だ」

「……コスモスの?」



ピクリ、と疾風の眉が動く。

俺はその呼び名を懐かしく思いながら笑う。



悪いな、その名前はもう俺だけのモンなんだ。



「ああ、だがコスモスはもうない」

「聞いたよ。突然だったから何処も驚いたって」



独断でこの決断をして、大半が揺れるとは思ってた。

だが、この決断に俺は悔いはねえ。

誰に何を言われようが、罵声を浴びようが、揺らがねえもんを手に入れた。

俺自身の道だ。

清々しい気持ちでいる、と言ったら変かもしれねえけど、それでも前の退屈な毎日なんかより数倍も世界が光って見える。



俺のその顔を見て何かを悟ったのか、疾風はそれ以上何も聞かなかった。



「あ、茶飲む?」

「ああ」



疾風は手際よく二人分の茶を入れると、俺に差し出し、二人して茶を飲む(絵面的にはシュールだな)。

熱い茶は喉元を焼き、腹に落ちた。