散らないサクラ



それを脳がフル回転で吸収すると、のぼった血が全て引いていく。


はっ、こいつ弥生の弟か。



その事実に体の力が抜け、馬鹿馬鹿しさに口角があがる。

俺は完全に戦闘体制を解いた。

それを見て気に食わなかったんだろう、男は挑発するように鼻を鳴らす。



「余裕の笑かァ? 舐めてんじゃねえかクズ! テメェが来ねえならこ」

「俺は弥生の男じゃねえ」

「らいくぞ、糞……が? へ?」

「……俺は弥生の男じゃねえ」



よく見ろ、制服、と付け加える。

それを先ほどとは打って変わって、でけえ目ん玉をまん丸にして見る男。

暫くの沈黙の後。

その沈黙は男の盛大の笑いによって破られる。



「あははっはははっ! あー、ごめん、ごめん! 源さんがお嬢が男連れて帰ってきたって部屋に飛び込んでくるもんだから、てっきり姉さんの男かと」



ごめん、ごめん、と繰り返す男に謝罪の気持ちは汲み取れない。

謝っているのに謝ってないこの感じ。

弥生とこいつが兄弟だというのが納得できる。

こう、人をイライラとさせるところとか。

俺はさっき引いた血の気が上がってくるのを抑えようとする。



目の前の男は今だにひぃひぃ、と喉奥から笑い声を漏らす(潰してぇ)。

一通り笑い、満足したのか、段々と笑い声が引いていく。



「あーっはは……。いや、悪い。さっきは勝手に勘違いして喧嘩を売って悪かった」



す、っと目の奥を引き、軽く頭を下げる。