散らないサクラ


と、その時障子が何の前触れもなく開き、そこから一人の男が現れた。

すぱん、と障子が良い音を立てる。



「……アンタが一緒にきた男?」



光る眼光が俺を見る。

品定めされているみたいに、俺を上から下まで見られる。

いい気はしねえが、ここは人さまの家。

勝手におっぱじめるわけにもいかねえし、なにより弥生に迷惑をかけたくない。

俺は男の足元からじっくり視線をあげ、そして視線を合わせる。



「……そうだ」

「ちっ……、よりにも寄ってこんなキンパ野郎かよ」

「あ?」



呟かれた、と言うよりは聞こえるほどの音量で悪態をつかれた。

ピキリ、とこめかみが鳴る。

不機嫌そうに寄せられた眉と、瞳が俺を気に食わないと言わんばかりに主張する。

糞が、俺の方がンな顔してえよ。



「ムカつく。……お前強いわけ?」



売られる言葉、喧嘩の合図。

族を止めたとは言え、血が騒ぐ。

ぶっ壊したい、潰したい、泣き顔が見たい。


……ああ、全然成長してねえじゃん、俺。


自分の駄目さに嫌気がさし、俺は自分自身をあざ笑う。

それを笑われたと勘違いしたのだろう、男の怒りのボルテージがあがるのが分かった。



「余裕じゃん、お前。……姉さんに相応しい相手なのか、俺が決めてやるわワレェ」



その言葉に、ひゅ、と煮えたぎり始めた血が引いて行く。



――――姉さん?



戦闘態勢に入り始めた目の前の男を、俺は呆然と眺めた。



……弥生の弟。