「実家」
そう一言告げられて、俺は止まっていた思考回路をフル回転させる。
……弥生の実家。
色んなものがグルグルと脳みそを駆け巡ったが、今は質問してられる状況じゃねえ事が雰囲気で分かる。
バイクを止め、門を潜ると任侠映画とかで見るような人間が出迎えて来た。
「お嬢、おかえんなさい」
「ただいま」
「牡丹の間にいらっしゃいます」
「ああ。……あ、こいつはあたしの連れ。戻るまでもてなして」
「へい」
「秋羽、あたしちょっと用事済ませるからそれまで待ってて。源吉(げんきち)、頼んだ」
「へい」
そう言って弥生は俺に一瞥くれると、そのまま足早に玄関へと消えた。
当の俺は去った背中を眺めて、ここが“組”の中だと言う事を実感していた。
源吉と呼ばれた男が、低くしていた姿勢を戻し、口を開く。
「お嬢が戻るまで、部屋で寛いでくだせえ」
「……あ、うす」
俺は促されるまま、玄関へと向かい弥生の実家の敷居を跨いだ。
なんとも不思議な感覚が全身を駆け巡ったが、弥生と同じ匂いがして、此処がやっぱり弥生の“家”なんだと思った。
源吉さんが俺を客間に通し、お茶と茶菓子を用意すると、用事を済まし戻ってくると言って、部屋を出て行った。
別に俺を一人にしたまんまでもいいと思ったが、客にそんな無礼を働かないのだろう。
部屋に入って熊の剥製やら、龍の掛け軸やらを見て、極道と呼ばれるここの家の雰囲気を感じた。
―――――極道。
ぞくり、と背筋に冷たい物が通り、俺は胡坐の上にある拳を強く握った。


