Cherryblossoms...07



それから、数日後。

あの時感じた胸騒ぎが、実現となって俺に振りかかって来た。



「獅子ィ、悪いけど俺、不完全燃焼で終わりたくないから」



そう言って目の前でニタリと笑った番犬を、初めて心の奥底から“コロシタイ”と思った。






* * * *


糞熱い居間で扇風機を最強にして熱さを凌いでいた俺に、携帯に歩から連絡が来た。

暑さで不機嫌な俺は携帯を机の上から引ったくり、押しつぶす勢いで通話ボタンを押す。

その機械から聞こえて来たのは、歩の焦った声。



『秋! 落ち着いて聞いてくれ、聞いてもすぐに動くんじゃねえからな!』



いや、お前の方が落ちつけよ、と言いたくなったがここまで慌てる歩も珍しい。

俺は答えずに次の言葉を待った。



『今、俺たちのたまり場にケルベロス……、番犬から手紙が届いた。その内容なんだけど―――――――』



その内容を聞くや否や、俺は携帯から手を離し、ソファを蹴り倒し家を出た。



電話越しで歩の怒鳴る声が聞こえたが、そんなの俺の耳には一切入って来なかった。

俺は心臓の音が次第に早くなっていくのを確実に感じながら、外まで飛び出し、バイクに跨った。


ドドドドドッドッ、不自然に心臓が跳ねる。


エンジンをふかし、アクセルを最大に踏切、ヘルメットも付けず走り出した。



――――『その内容なんだけど、“獅子の大切なハニーは俺が預かったよ。信じないと思ったから髪の毛も同封しておいたからね。会いたい? 会いたいなら最後に喧嘩したあそこにおいで。じゃあ、待ってるから”って。……髪の毛も、入ってた。でも佐倉さんのかわか』――――



そこまで聞いて俺は無我夢中でここまで来ていた。