あ、先生だ。


廊下を先生が通り過ぎた。


私はおもむろに日本史の教科書を取り出して先生を追い掛けた。


「先生!!」


「お、飯塚。」


振り返って名前呼んでくれただけなのに、それだけでドキドキする。


「どした?教科書持って。」


「あ、えと…分からないとこ質問なんですけど。」


「積極的でよろしい。
じゃあ準備室で待ってて。

ちょっと美術室に寄ってくから。」


「はい…。」


先生の右手には、文庫本。


また戸川先生に借りたんだ。