帰り際

『送るよ。乗って!』

爽やかさが 期待をさせるが、何かある訳がない。


彼は とても真面目で

素直で好感がもてる青年で

底抜けに優しくて

何より 未だ元カノが好きなのだ



あたしは思いがけず言ってしまった


『アキラ君が好き』







…ダメに決まっていた。

優しい彼は 答えなかった

優しさが 人を傷付けると知っていても 冷たさで傷付ける事をしない


子供の様に泣くあたしに たくさんのキスをしてくれた


キスの冷たさが 初めて あたしの心に問いかける
【本当に この人を好きになって良かったのか】


と。