わたしはいつものように
大きなくすの木の下でないた。

『お父さんのバカーっ!』『乃愛さみしいよぅ…』
会いたい…お母さん!

しばらく泣いていると
わたしの後ろから一人の
男の子が声をかけてきた。
少し茶色い髪でくりっとした優しそうな目だった…

『お父さん仕事で…
お母さんもいなくて…
今日誕生日なのに〜!』
『俺も今日誕生日なんだ』『本当〜!?』
男の子は切なそうに言った。どこかわたしと同じ目をしているようで、ほっとけなかった…

『わたしは伊吹乃愛!
あなたは?』
『俺は櫻田海斗!!』
『よろしくなっ』
そういって海斗は
あたしの手を握った。

『ほら乃愛!
もう一人ぼっちじゃね〜だろ!?』
『しゃ〜ねぇ…
お前がつらいときは俺が 守ってやるからよ!!』
『ありがと…海斗!』
この誕生日の夜が
わたしと海斗の初めての
出会いだった。