3月7日
伊吹乃愛
六才の誕生日の夜…


『お父さん遅いなっ』
『今日は乃愛の誕生日なのに…』
私は何度も時計を見ながらお父さんの帰りを待っていた。
あたしの大好きなイチゴケーキを買って来てくれると信じて…

時計の針はもう8時を回っていた。

プルループルルー
『あっお父さんだ!』
わたしは急いで電話に出た。
『もしもし?お父さん!
あのね!!』
『乃愛か?お父さん会議がながびいて帰れそうもないんだ…悪いけど昨日の残りのカレーでも食べて寝ててくれ!』
『うん!分かった!
おしごとがんばってね』わたしは泣きそうになるのを必死でこらえていた。


お母さんはわたしが小さい頃に離婚した。
どんな人だったかも覚えていない。
だからお父さんに嫌われないよう、いいこでいるよう頑張っていた。
たまに泣きたくなるときもあるけど、それが辛いとは思わなかった。
お父さんが
大好きだから……