~美流side~

車の中では気を使ってくれてか、あまり会話はなかった。

「もぅすぐだからね」

「はい。」

私は男の名前をまだ知らなかった。

だからちょっと緊張したけど、意を決して聞いてみた。

「あっ…あの、…まえ」

「ん?なに?」

「なまえ…」

「あぁ!教えてなかったかな?俺は和樹。」

「かずきさん?」

「うん。平和の和に樹木の樹」

今まで無言だった車内が、少しだけ温かくなった。