旦那様は社長 *③巻*


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「光姫、ちょっとこっちで飲まないか?」


お風呂から上がり、明日の仕事で着ていく服を選んでいると、悠河がワインを片手にドアの隙間から顔を覗かせた。


「うん……。すぐ行く」


さっきお風呂の中で悠河が何か言おうとしたけれど、あたしはわざと話を逸らし、現実から逃げた。


だけど、いつまでも逃げ続けることはできないって、分かってる。


覚悟を決めて、悠河が待つリビングへ向かった。


ワインをグラスに注ぎ、ソファーへと移動する悠河が、こちらを見て優しく笑う。


それを見るとまた涙が出そうになって、「何かおつまみ作ろうか!」と、わざと明るく振舞いながら背を向けた。


それでも今回ばかりは、悠河が許してはくれなかった。


「光姫、いいからこっちに来い」


真剣な声でそう言うと、悠河はあたしの身体を抱き上げ、ソファーへ下ろした。


「……悠河?」


てっきり隣に座るものだと思っていた悠河が、そのままあたしの足元に跪き、真っ直ぐ視線をぶつけてくるので戸惑う。