旦那様は社長 *③巻*


悠河の側にいたい……。もう、絶対に離れたくない……!


「悠河は、あたしがいなくて平気なの?」

「光姫、落ち着けって」


立ち上がり、抱きしめようとする悠河の手を振り解く。


「一年だよ? 一年も離れ離れになるんだよ? そんなのあたし、耐えられない! ねぇ、どうしてあたしが行っちゃいけないの? あたしは悠河の何なの?」


完全に我を忘れてしまった自分を、冷静に見下ろしている悠河。今のあたしには、それが理解できなかった。


「何で何も言わないの?」

「……お前が落ち着いたら話す」

「落ち着く……?」


再び感情が暴走しそうになったけれど、目の前の悠河が辛そうに顔を歪めたので、ぐっと続きの言葉を呑み込んだ。


「頼むから、オレの話を聞いてくれ」

「……」


身体の力を抜き、ストンと身体をソファーに預けたあたしを見て、ようやく悠河は隣に腰を下ろした。そしてあたしの身体を自分の方へ向き直らせる。


俯くあたしの顔を強引に持ち上げた悠河は、そっと瞼にキスを落とした。


「光姫……」


ゆっくり頬へと滑り落ちる悠河の唇。


怒っていたはずなのに、伝わる悠河の温もりが、頑なな自分の心を少しずつ解きほぐしていく。


温もりが離れると、あたしの許可を求めるように、悠河の指が唇を優しくなぞる。


そのまま静かに目を閉じると、優しい温もりが唇へ舞い降りた。