旦那様は社長 *③巻*


何を考えているのだろう。

視線を逸らせないでいると、悠河がゆっくりと手を伸ばし、頬に触れた。


「これからのこと、ちゃんと話そう」


悠河の顔があまりにも真剣で、あたし自身もきちんと向き合わなければと思った。


「……はい」


頬に触れた悠河の手に、そっと自分の手を重ねる。


この顔を見れば、これから何を言われるのか、だいたいの想像はつく。


「フランスへは……一人で行く」


固い決意と共に告げられた予想通りの言葉に、自然と涙が零れた。


情けないけれど、何も言えなかった。言葉が出なかった。


お昼、会長と悠河の話を聞いていた時から、こう言われることがなんとなく分かっていた。


二人の会話に、一切あたしのことが出てこなかったからだ。


だけど、今回ばかりは素直に頷けない。だって、期間は最短でも一年。長すぎる────


今までの、ただの出張とは訳が違うのだ。


「……いや」

「光姫、話を聞け」

「ぜったいに嫌! あたしもフランスへ一緒に行く!」