何を考えているのだろう。
視線を逸らせないでいると、悠河がゆっくりと手を伸ばし、頬に触れた。
「これからのこと、ちゃんと話そう」
悠河の顔があまりにも真剣で、あたし自身もきちんと向き合わなければと思った。
「……はい」
頬に触れた悠河の手に、そっと自分の手を重ねる。
この顔を見れば、これから何を言われるのか、だいたいの想像はつく。
「フランスへは……一人で行く」
固い決意と共に告げられた予想通りの言葉に、自然と涙が零れた。
情けないけれど、何も言えなかった。言葉が出なかった。
お昼、会長と悠河の話を聞いていた時から、こう言われることがなんとなく分かっていた。
二人の会話に、一切あたしのことが出てこなかったからだ。
だけど、今回ばかりは素直に頷けない。だって、期間は最短でも一年。長すぎる────
今までの、ただの出張とは訳が違うのだ。
「……いや」
「光姫、話を聞け」
「ぜったいに嫌! あたしもフランスへ一緒に行く!」

