サクラノコエ

母さんは飯を口実にして、俺の様子を伺うようにちょこちょこ部屋に入ってきた。

しかし、どんなに声をかけられても、俺は母さんの言葉を無視した。

母さんが出て行ったあとには、いつも机の上に飯が置かれていた。けれども、また戻してしまうのが嫌で、一緒に添えてあるゼリー飲料以外にはほとんど手をつけなかった。

父さんは、夜中に一度だけ俺の部屋に来た。

すべてを放棄して引きこもる俺を責めに来たのだと思った。

ところが父さんは、責めるどころか寝たふりをしている俺の頭を軽く撫で

「ごめん……な」

と、絞り出すような声で一言だけ発して、部屋から出て行った。

廊下から、父さんが鼻をすする音がかすかに聞こえた。


また

胸が痛くなった。