サクラノコエ

前に中原と学校で会ったとき、中原の愚痴を聞きながら笑っていた。

その内容は、ホント、他愛もないというか、くだらないことで。

だけど、そんなどうでもいいような痴話喧嘩の話が凄く眩しく思えた。なにも気にせず思いのままに振る舞う中原の彼氏が羨ましかった。

俺は理沙の病気を知って以来、常に他の人格の存在を意識しながら話をしていた。

全ての人格に俺を受け入れて欲しくて、必要以上に多重人格に理解のある『いい彼氏』を装って。

だから、いつも気が抜けなかった。

「辛いなら無理して付き合うことないだろ?」

あの日、俺が中原に言った言葉が妙に蘇る。

頭の中がその言葉で埋め尽くされていく。