サクラノコエ

「あぁ。多分あまり寝てないからかな?」

「勉強ですか?」

「まさか! 彼女とメール」

「ラブラブなんですね~!」

羨ましそうに目を輝かす中原に、俺は

「ま~な~」

と、少し大げさに得意気な笑顔を作ってみせる。

「いいなぁ! 私の彼氏なんて、冷たいですよ! 夜とかいっぱいメールしたいのに『眠い!』って、そのまま」

その言葉をきっかけに始まった中原の彼氏への愚痴は、途中、俺に意見を求めながら、教室で宿題を取って、再び昇降口に戻るまで続いた。

俺はそれを、面白がって笑いながら聞いていた。

だけど、そんな何気ない話が、気付かないうちに俺の心に小さな、小さな、亀裂を作っていたなんてこの時は思いもしていなかった。