サクラノコエ

「理~紗ちゃん」

今度は猫なで声で名前を呼んでみる。

変わらず顔を上げようとしない理紗を驚かせてやろうと、かろうじて届くこめかみ付近にゆっくりと唇を寄せ、軽くキスをしてみた。

計算通り理紗がビクっと反応して、ようやく俺を見上げる。

「真っ赤だな」

「もぅ! だから……」

「でも、すげぇかわいい」

俺は怒り出す理紗の言葉を遮るようにそう言いながら、今度は理紗の唇にそっと唇を重ねた。理紗との初めてのキスは、触れたか、触れないかという程度のものだった。

「……キス?」

やはり初めての経験らしく、理紗は確認するように俺に尋ねる。

「そうだよ」

その反応がなんだか新鮮で、まじめに聞いてくる感じがおかしくて思わず笑ってしまった。