サクラノコエ

変わらない態度を取りながら、本当はずっと複雑な気持ちだった。

食事中、本人は気付かなかったみたいだったけれど、羽織っているボレロの袖口が下がったときに見えてしまった理紗の手首。

理紗の左手首にはいくつもの傷跡があった。

どれも新しい物ではなさそうだった。

でも、あれは間違いなくリストカットの傷跡だ。前に誰かが「ムシャクシャしてやった」と、面白半分で軽めにつけた、もっと小さな傷を見たことがある。

しかし、理紗の手首のそれは、前に見たものとは比べものにならない大きな傷。

その数もチラッと見えただけでも10本以上はあった。いつも長袖なのは傷を隠すためだったのだろう。