サクラノコエ

「いいんすか?」

「いいよ。お客さんも少ないし」

「ありがとうございます!」

俺は角倉さんの好意に甘えて、手早くタンクを元に戻し、引き継ぎを済ませて予定通り4時10分前に仕事をアップした。

「ありがとうございます。お疲れさまでした」

クルールームに戻り、理紗からの連絡をチェックするため、真っ先にケータイを開く。

特に着信も、新着メールもない。理紗は約束通り来られると考えていいらしい。

着替えながらウエットティッシュ型のメンズ用洗顔シートで、油でベタついた顔を拭き、汗くさいと言われないよう、念のためデオドラントスプレーもふりかける。

ハッキリ言って、理紗と会うのにこんなことまで気を使ったのは初めてだ。