サクラノコエ

「まっつん、今日はやたらと張り切ってるじゃん」

シンクで洗い物を片付けている俺の所に来た角倉さんが、茶化すように言う。ちなみに「まっつん」は角倉さんがつけた俺のあだ名だ。

「気のせいっす」

ツッコまれたくないことをツッコまれてしまい、これ以上深く追求されないようにわざとトボケた口調で返す。

しかし門倉さんが思いがけず

「今日なんか用事? 急ぐようなら大して変わらないかもしれないけど、OJのタンク戻したらアップしていいよ」

と、珍しく優しい言葉をかけてくれたのでちょっと驚いた。

「え?」

角倉さんに言われ、時計に目を向けると3時40分を少し回ったところだった。

殺菌が終わっているタンクを元に戻すのは5分ぐらいで終わるから、うまく行けば10分ほど早く仕事を上がれる。

10分早く仕事を上がれれば、もしかしたら理紗より早くコンビニに着けるかもしれない。