「なに逆ギレしてんの!? 母親だったらそれぐらい考えてやれって言ってんだよ!」

「向こうの親みたいなこと言わないでよ! いつもはちゃんとしてる! 私が向こうでどれだけストレス溜まるか分かる? 友達もいなければ、遊びに出るところもなくて、桃にちょっとでもなにかあれば、チクチク嫌味言われて! 実家に帰ってきたときぐらい羽根伸ばしたっていいじゃん」

「開き直んなよ!」

興奮して段々と大声になっていく俺らの声が2階で桃香と一緒に寝ていた中3の妹、美奈の耳に届いたらしく、美奈が慌てて階段を駆け下りてきた。

「お兄ちゃんもお姉ちゃんもやめてよ。桃が起きちゃうから」

「お前は黙ってろよ! お前だって腹立ってんだろ」

「だって……」

気弱な美奈は昔から、喧嘩っ早い俺と姉ちゃんの間に入ってとばっちりを食らう不憫な奴だ。